馬革は軽さ、耐久性、柔軟性に優れ、某有名ブランドのフライトジャケットやエンジニアブーツなどの高級素材としても使用されています。
一般的には牛革と比べて強靱性が劣ると言われていますが、それは馬革の薄さ=弱いというイメージであって、強度の面では牛革に引けを取りません。
馬と牛の繊維組織はよく似ており、例えば厚さ・鞣し・仕上げを同じ条件にして比較すると、実は馬革の方が強いと言われるほどです。
毎日使う鞄だからこそ、使い心地の良い軽さ、強さ、しなやかさを兼ね備えた馬革の魅力を実感して頂きたい。
そして、使い込むほどに変化する風合いやツヤなど、ナイロン等の製品では出せない革製品の味を楽しんで頂きたいと考えております。
馬は牛と比べて運動量が多いため、銀面と呼ばれる革の表面の繊維は牛革に比べ粗く、元からある小さい傷が多く見受けられます。また、シボとよばれるシワの大きさも部位によって違います。革の風合いを活かすために転圧加工等はせず、染料でしっかり染めた後に行う顔料加工も極力薄くしております。このため、ハギ合わせの作りを用いた鞄では、均一な風合いや色合いを出すことができません。シボの大きさの違いや色ムラがございますのでご注意ください。
オリジナルの鹿革製品をはじめてから10年近く経ちますが、おかげさまでその軽さと手触りの心地よさ認めて頂き、今では当社一番人気のブランドに育ちました。特にこの2~3年、軽い革製品を求めているお客様が増えていることを従業員達も強く感じておりました。2014年頃、オフィス街や駅などでよく見かけるビジネスバッグの素材は、革ではなく軽くて丈夫なナイロン生地を使った機能的なものが大多数。革を使ったビジネスバッグはとても丈夫で使うほどに愛着が増すのですが、重くなってしまいがちで、当社のラインナップを見回した時にも、ビジネスシーンで使える実用性のある鞄があまり存在しなかったのです。
そのような最中、同じく人気の当社オリジナルコードバン(革の宝石と呼ばれる馬革の臀部からしか取れない稀少部位)を作って頂いている職人から紹介されたのが、ホースハイドでした。
見た目は牛革によく似ていますが、はじめて手を触れたときに、その「軽さ」と「しっとりした仕上げ」に驚きました。軽さで人気の鹿革を使うことも考えましたが、<質感でいえばホースハイドの方がビジネスシーンには向いているのではないか?>という思いに突き動かれたのです。
2015年1月、職人と共にホースハイドとコードバンのタンナーの工場がある兵庫県姫路市に飛び、見学させて頂きました。工場を隅々まで紹介して頂いたり、馬革に対する技術や知識を直接教わることができて、とても勉強になりました。仕上がったホースハイドを使った商品等も拝見し、ますます意欲が湧きました。
早速、帰ってからは試作の連続でした。問題は、今求められているビジネス向けの機能性と、手頃なサイズ感。私たちが想像で描いたモノを、熟練の職人は忠実に再現してくれるのですが、実際に出来上がって見て初めて気づく事も多く、何度も作り直しをすることになりました。その結果、シリーズ全てのサンプルが完成するまでには一年以上の時間がかかりました。この間ずっと文句も言わずに付き合って頂いた職人達には、本当に感謝しております。
それぞれのプロが最大限の仕事を行う事で、すばらしいシリーズが生まれました。今後、少しずつ新作も増やせればと思っております。北海道しか店舗はございませんが、お寄りの際はぜひご来店頂き、お手に取ってホースハイド製品の素晴らしさを感じて頂ければと思っております。修理やメンテナンスがございましたら、遠方のお客様とは郵送のやり取りなどで、出来る限りの対応をさせて頂きます。末永く、愛着を持って使って頂ければ幸いです。
ホースハイドの「ハイド」とは、牛や馬などの大きな表皮のことで、アメリカ・カナダ規格では皮重量25ポンド(約11kg)以上のものを指します。革製品の原料皮は大きさによって「ハイド」と「スキン」に区別されるため、同じ牛皮の仲間でも成牛のステアやカウは「ハイド」、仔牛のカーフやキップは「スキン」と呼ばれています。
「革を鞣す」という事は、具体的には生の「皮」から製品としての「革」に変化させる工程を指し、その鞣しを行う業者をタンナーと呼びます。動物によって皮の性質や鞣す時の技術や設備が異なるため、タンナーにもそれぞれの専門業者が日本各地域に存在します。鞣しは気温の影響を大きく受けるため、極寒の北海道には存在しません。